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宙ツーリズムコラム ~サブオービタル宇宙旅行 体験価値競争の時代へ~

(株)クラブツーリズム・スペースツアーズ

代表取締役社長 浅川恵司

既に多くの方が報道をご覧になったように、7月11日のヴァージンギャラクティックのテスト飛行には同社創業者のリチャードブランソン卿が乗船し、7月20日のブルーオリジンの初めての有人飛行には、同社創業者のジョフベゾス氏が搭乗した。飛行はそれぞれ大成功を収め大きな話題となった。

当社が把握できただけでも、ヴァージンの実施後4日間で30にも及ぶ日本国内のテレビ番組がこのニュースを紹介し大きなメディア露出になった。トップが自ら宇宙に行き、宇宙観光事業の開始が目の前に迫ったという大きなニュースだったが、これに加えアメリカの二人の超富裕層が宇宙旅行の開発競争をしているというストーリーも加わったところが話題の大きさを倍化した。
多くの人をワクワクさせたが、これからどのような展開になるかニュースの嵐も収まった今少し考えてみたい。

これからの予定だが、顧客の受け状況に関しては異なっている。ヴァージンは既に600名の予約者を確保し、サービスも付加した新価格(一人45万ドル)でそれを1000名にまで増やそうとしている。ブルーオリジンは、いまだ売り出し価格は未発表で発売開始をしていない。が両者とも今後の開発予定はほぼ同様で、「あと2回のテスト飛行を行い来年には商業オペレーションを始めたい」と発表している。(2021年8月20日現在)
7月のトップの宇宙フライト搭乗競争を見ていると、今後も販売や運航面でのつばぜり合いが話題になると思われる。7月の例を考えると、競争がニュース価値を増加させる効果につながっており、両者はうまくそれを利用しているようにも見える。

さて、宇宙旅行がビジネスになるためには、以下の大きな課題をクリアすることが前提であると言われてきた。

1.物理的安全性
2.医学的安全性
3.法律の整備
4.宇宙港の整備
5.価格の大衆化
6.体験価値の提供

安全性の確立は何よりも最優先されるものだし、宇宙船の運航許可やインフォームコンセントなどの法的バックアップ、宇宙港の整備は宇宙旅行が産業として育っていくための絶対条件であることはより知られつつある。又、参加費用が少しでも安くなっていくことがユーザー人口の拡大には必要であることに異論はない。これらに加え、私は特に6番目の「どのような体験を提供できるか」という点が今後の大きなキーを握るのではないかと考えるようになった。

時代は「宇宙に行ける」から、「宇宙をどう体験するか」に移っていくのはないだろうか。その意味で、この両者のサービスを見ると、同じサブオービタルでも違いが結構あり、どちらの宇宙船がより多くの体験価値や感動体験を生むのかという点について思いを巡らせる。
おそらく両方の宇宙船に乗る人が来年には出てくる可能性もあるので、その比較はやがて明らかになる。さらに将来一般化すれば両方乗るという人は少なくないかもしれない。ちょうどディズニーに行く人はUSJにも行くように。

そのような思いで、両者の比較表を7月のテスト飛行の実績や公表されている情報を元に作成した。

乗客6名で、無重力4分間体験の2点は同じだが、打ち上げ方式、所要時間、操縦方法、高度、ランディング方法など違いは多い。果たしてどちらの搭乗者がより多くの体験価値を持ち帰れるのかが今後明らかになっていくので大変興味深い。

ところで打ち上げ場所についての話題はメディアにはあまり出てこないが、両者は州は異なるが実は非常に近いところで打ち上げられる。どちらの打ち上げ場所にも最も近い主要空港はロスアンゼルスから約2時間で飛べる「エルパソ」だ。ここから車で北に2時間でヴァージンのスペースポートアメリカがあり、東南に3時間でブルーオリジンの打ち上げサイトがある。「エルパソ」は米テキサス州、米ニューメキシコ州、メキシコ合衆国の境界線に近い、人口では全米20位の中堅都市で、これからの宇宙観光のハブになる可能性があるかもしれない。この街自体に観光名所や大きな見どころはないが、東に3時間ドライブすると、世界遺産のカールスバッド洞窟群国立公園がある。その鍾乳洞の迫力満点の巨大な地底世界は必見で、全米で最も低い地点(489m)としても有名だ。
「エルパソ」は全米で最も高い「宇宙空間」と最も低い「地底空間」の両方に行ける所と言える。

さて、体験価値の重要性は、サブオービタルだけの話ではない。2021・22年には、地球の軌道上を周遊するオービタル宇宙旅行も始まる。スペースエックスの観光客用の貸し切りは複数企画が進んでいるし、12月にはゾゾタウン前社長の前澤さんもソユーズに乗ってISSに行くことが進んでいる。 又オービタル飛行は、ISSに滞在するものと、そこには寄らず軌道を周回して戻ってくるものにタイプが分かれていくのでその比較も話題になるだろう。 オービタルはサブオービタルと較べ、桁が2つ違い参加費数十億という高額なものだが、それらも含め、さまざまなタイプの宇宙旅行体験の体験価値比較の時代が始まろうとしていて目が離せない。

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宙ツーリズムコラム ~サブオービタル宇宙旅行 体験価値競争の時代へ~

(株)クラブツーリズム・スペースツアーズ
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