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宙ツーリズム特別インタビュー企画
宙ツーリズム推進協議会理事 山崎直子さん×河内美里さん  対談インタビュー 後編

山崎直子さんは1999年2月に宇宙飛行士候補者に選ばれ、2010年4月にスペースシャトルで宇宙飛行を経験。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)退職後は宙ツーリズム理事だけではなく、自ら代表理事を務める一般社団法人Space Port Japanを立ち上げるなど宇宙を身近にしていくために精力的に活動中。

河内美里さんは女優だけでなく歌手としての一面も持つ、宇宙や星が好きな宙ガール®。

お二人が感じる宇宙の魅力だけでなく、宙ツーリズムの未来や宇宙旅行への期待について、対談していただきました。前編に引き続きお楽しみください。

(聞き手、構成:木原 美智子、写真:飯島 裕)
※宙ガールは株式会社ビクセンの登録商標です。

帰ってきてから宇宙の感覚を呼び起こす大切さ

―宇宙旅行が実現する未来は楽しみなのですが、宇宙旅行が身近になりすぎると宇宙旅行ばっかりに注目が集まり、地球から見上げる宙の美しさが忘れられてしまうことはないのでしょうか?

山崎:おそらく、宇宙旅行が盛んになってきても、そんなに頻繁は宇宙旅行に行けないと思います。何年かに1回行くらい行ければ、なんじゃないかなって思っています。海外旅行と同じだったとしても数年に一度くらいかな。行ったときの感動を帰ってきて日常生活に戻ったときに、ふと呼び戻してくれるのは、地上から見上げる宙の美しさだったり、宇宙にちなんだ施設だったりします。その感覚を忘れないで、さらに次のために準備することが大切なんじゃないかなって思います。

―実際に山崎さんも戻って来られてから、感覚を呼び起こすためにプラネタリウムに行きますか?

山崎:しますね。プラネタリウムも好きで、時間があるときを見つけてプラネタリウムを見に行きます。

―星も見に行くことも?

山崎:はい。ありますね。

―宇宙という宙を体験してから、地球に戻ってから見る宙ってやっぱり見方が変わりますか?

山崎:変わりますね。宇宙の欠片から地球も太陽もできていて、私たちの体もできているという理屈は分っていても、宇宙に行くまでは「宇宙はまだ遠い世界」という意識がありました。宇宙は特別な世界なのだと思っていましたが、実際に行ってみると「宇宙は故郷だな」と気付いて。全ての生みの親なのだなって。地球の生みの親でもあり、私たちの生みの親でもある。だから地上に戻ってきて宙を見上げると「兄弟があそこにいる」という気持ちになりますね。それは感覚として腑に落ちるっていうか。

宇宙旅行への不安もサポートしたい

―“ファーストマン”や“インターステラ―”、“ゼログラビィティ”のような宇宙と人が向き合う映画を見ると「宇宙には恐怖もあるな」と感じます。宇宙旅行に行くときには、それにどう向き合うかも大事だと思いますが、そういったケアやサポートはどのようにしていきたいですか?

山崎:おっしゃる通り、宇宙はまだまだ危険と隣り合わせのところもあって。だから行く前にしっかり準備をするというのは大切ですね。例えば、何かハプニングがあった時にはどうやって脱出すればいいのか、1人1人がどう行動するのか、というのはもちろん訓練でやると思います。そのような面は宙ツーリズムでもゆくゆくはお手伝いできたらと思いますね。
スペースポートをつくるときに、日本で安全性能をチェックできるような体制が整えられたらいいなと思います。宙ツーリズムの会員に入っているクラブツーリズムさんがJAXAと連携して「宇宙に行ったらどんなことしてみたいですか」とか宇宙旅行に関する内容のアンケートをとったことがあって。その中の1つの「不安なことはなんですか」という質問に対して「危険」と「費用面」の2つが大きな回答として出てきて。「それでは、どうしたらその不安がなくなりますか」という質問では、コストは下がるしか解決策はないですけど、危険については「日本から宇宙に行けるのであれば安心できるかも」という人が半分ほどいて。それなら日本から宇宙に行けるようになったらいいなと思っています。

―たしかにそうですね。日本という故郷から飛び立つことには魅力がありますね。宙ツーリズムに加入してくださっている自治体から宇宙旅行に行くというのもおもしろそう。その地域で星をみて、「じゃあこの地域で見上げた星を宙に行って見てみましょう」というのは、ストーリーとしていいなと思います。

山崎:素敵ですね。だからスペースポートが日本に1カ所である必要はないと思っていますね。

宙ツーリズムに期待すること

―スペースポートを拠点に、さらに宙ツーリズムが盛り上がっていきそうで楽しみですね。河内さんは宙ツーリズムに期待することはありますか?

河内:私の周りの同年代の子の中には、SFアニメとかセーラームーンのような星に関係したアニメや映画が好きな人やプラネタリウムを見に行く人も多くいますね。ただ、星のことを知ろうとするときに何か専門的な知識がいるのかなとか、難しそうかな、って考えてしまって。そうではなくてもっと簡単に、気軽な気持ちで星の知識への興味を深めることができるたらいいなと思いますね。

宙が好きな気持ちや綺麗だなと思う気持ちが自然に深まっていくきっかけになったらいいな。宙ツーリズムをきっかけに、これからどんどん若い世代の宇宙への見方が変わっていってほしいですね。

河内:普段、私も宙を見上げることが好きで、仕事でいろんな地方に行ったときは「あ、ここは宙が広いな」とか、宙を見るにあたってどういう場所だったら見やすいのかとか考えることがあります。街中でも宙が見えやすい場所と見えにくい場所があるので、そういう場所の情報を気軽に知ることができたら、宙を見る機会にもっと出会えるのではないかなって思います。

―宙を見上げることが好きなのは昔からですか?

河内:小さい頃から気付いたら宙を見るようになっていましたね。歌をつくるときには、好きな“星”というフレーズをいれることもあります。宙を見上げながらぼんやり考えたりとかするのも好きです。今まで具体的に考えたことはなかったけど「宙が好きだな、宙に興味があるな」って改めて思います。

―ぜひ、河内さんのような若い世代の皆さんに宙ツーリズムに参加して行っていろんな宙を体験してほしいですね。山崎さんは宙ツーリズムに何を期待していますか。

山崎:宙とか宇宙という存在にツーリズムが加わることで、食べ物とか景色とか、教育、環境、体験など、皆さんが興味をもっているところから入っていきやすいかなと思っていて。皆さんそれぞれが好きな切り口で宙に親しみを思っていただけたらなと思います。そこから、自分の中での宙への興味を広げていってもらえたら嬉しいなって。宙ツーリズムには自治体さんからいろいろな施設さん、企業さんも入ってくださっていて、会員の皆さんが産業としてもっと結びついて、宙という切り口で今までにない新しい産業が開けたらいいなというのも期待していますね。

―これからどう化学変化して行くのも楽しみですね。

山崎:そうですね。その産業の宙の範囲を地上から宇宙に広がっていけたらいいなって思いますね。

最後にみなさんへメッセージ

山崎:みなさんぜひ、宙を見上げましょう。ぜひ、上を向いて宙を見上げてほしいです。宙を見上げることで、私たちの「故郷」である宇宙のこと、そして自分自身のことを見つめてほしいです。

―ありがとうございます。河内さんは、これから宙ツーリズムを楽しむ側になると思いますが、どんな風に楽しみたいというイメージはありますか?

河内;宙を見上げるだけじゃなくて宇宙から見たらどんな景色が見えるのだろうというのも想像しつつ、今見える自分の世界とこれから見られるかもしれない世界を自分の中でつなげて、どんどん興味を広げていけたらいいなと思いますね。

山崎直子さんプロフィール
千葉県出身。2010年スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗し、ISS組立補給ミッションSTS-131に従事した。2011年にJAXA退職後、内閣府宇宙政策委員会委員、一般社団法人スペースポートジャパン代表理事、宙ツーリズム推進協議会理事などを務める。著書に「宇宙飛行士になる勉強法」(中央公論新社)など。

河内美里さんプロフィール
1997年生まれ。東京都出身のタレント。オスカープロモーションに所属。 舞台「遙かなる時空の中で6 幻燈ロンド」主演や舞台「四月は君の嘘」澤部椿役を務める女優としての一面だけでなく、自ら作詞した楽曲を歌う歌手としても活動中。 2018年11月には5thデジタルシングル「ルーレット」を配信。大好物はチョコレートと玉子焼き。

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