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宙ツーリズム特別インタビュー企画
宙ツーリズムアンバサダー
KAGAYAさんインタビュー後編

日本国内だけでなく世界中を旅し、様々な宙と出会ってきたKAGAYAさん。
昨年公開された映像作品「星の旅」は北半球から南半球まで世界各地の星空と出会う旅がテーマ。
まさに、宙ツーリズムが目指す「“宙”ד旅”」を表現した作品です。
今回は「星の旅」を中心に、KAGAYAさんが旅をして感じていること、宙の魅力などをうかがいました。
(聞き手、構成:木原 美智子、写真:飯島 裕)

KAGAYAさんインタビュー前編はこちらから

宇宙の中にいるという実感

―作中にある“人が地球上を移動すると共に星空が変わる”という映像がとても分りやすかったです。映像を楽しみつつ宙についての知識も自然と学べる要素が入った作品だと思いますが、知識を盛り込むことを意識されているのでしょうか?

KAGAYA:日本国内の動ける範囲で星空を見ていた頃は、頭の中では地球が動いていて星空が止まっている(=地動説)と分かっていても、感覚ではどうしても星が動いていました。

正直な話、僕の世界では天動説(=地球が止まって、星空が動いている説)でした(笑)。ところが、世界中を旅して、特に南半球で逆さのオリオン座を見たときに「あ、これは星空の中に地球が浮いていて、地球の丸い形の上を私が移動して、その地球のとある場所にいるのだな」と頭の中で立体的に分かるようになって。それは新鮮な驚きでしたね。今まで日周運動しか知らずに星がぐるぐる回っていたのが、別の軸で動いたことで天球が立体的になりました。

KAGAYA:オーストラリアで天の川の濃い部分が真上にくる光景を見て「銀河が丸見えじゃん」という驚きもあって。日本で天の川を見ても銀河系って想像しづらいですよね。ところが真上に銀河中心(=天の川の濃い部分)がくると、それが下まで繋がっている様子がなんとなく想像できるんですよ。それを見て初めて宇宙の中の地球にあることがなんとなく分かってきて。この感動と驚きをなんとか人に伝えられないかなと思ってあの映像を作りました。イラストでは伝わらないけど、ドームの中でアニメーションさせると立体的になってすごく分りやすくて。北極からずっと南半球まで天球を動かしていくと「はっ」と皆が思うのではないかって思いましたね。

―たしかに「はっ」となりました。それまでは私も頭の中では天動説でした(笑)。

KAGAYA:しょうがないですよね(笑)。特に地球のある一カ所にいる以上は。

―そういった気付きは宇宙について知識があるから感じるのかなと思っていて。これから宙ツーリズムを楽しみたい人、星を見たいと思っている人が全員バックグラウンドに知識を持っているとは限らないですよね。そういった人が南半球に行って果たして“宇宙の中にいる”という感覚が入ってくるのかなと疑問に思います。

KAGAYA:たぶん、南半球で見るオリオン座が逆さになっていても「なんで」って思うだけですよ。「なんで」って思ってさらに一歩踏み込んで調べて「あ、こういうことか」と分かればいいけど、なかなか難しいですよね。それを教わっても、本を読んでみても難しい。それならプラネタリウムで体験してから旅行するのが一番良いのではないかと思います。

―そのプラネタリウムの活用方法はおもしろいですね。

KAGAYA:そうですね。プラネタリウムの没入感を活かして世界中を旅する。本当に人間が行けない場所にも行けるわけですよね。

皆既月食の時に月に行きたい

―作品の最後に「地球という船に乗り、宙という窓から、宇宙を望む」というメッセージがあって。今は地球内の規模でツーリズムと言っているけど、いつかは地球という船を飛び出るツアーも宙ツーリズムのひとつとして現実になると思います。もし、宇宙に行ける旅が出来たら、見たい宇宙の景色はありますか?

KAGAYA:私は月に行きたいですね。皆既月食の時に月にいたいです。これまで日食や月食を地球上で楽しんできましたが、これを両方ミックスしたものを月面で見たいです。皆既月食のときに月面にいれば、地球が細い三日月のような形になってきて、太陽がどんどん近づいていて、隠されていって、太陽のコロナが見えてくる。そのリングが赤くなるはずで、その赤い地球の光で月面が明るく照らされるはずです。

―地球光にてらされて月面が赤くなるのですか?

皆既月食とスカイツリー
撮影:KAGAYA

KAGAYA:そうなるはずですよ。月食を地球から見ていると月面が赤くなりますよね。あの色で周りの月面の景色が照らされて、地球から漏れているコロナがみえる。それが1時間続くっていうのはおもしろいなと思って。月に行くタイミングを選べるとしたら、皆既月食のタイミングで行って見たいです。想像ではシミュレーションできますが、実際に現場で見たことないのでどこか間違っているかもしれない。おそらく想像できなかった何かが、そこに立ち会えばわかると思います。なにしろまだ誰も経験したことがないのですから。

見られない景色を妄想する楽しみ

KAGAYA:実は、旅を考えている時間がすごく好きです。何日の何時にここに行くとこれが見えるぞっていうのをコンピューターでシミュレーションして妄想している時間が一番楽しい。月のように行けもしないことも考えたりしています。何十年も先のこととか、「ここ海しかないよ、どうやって行こう」とか。それは実際に誰も見られないけど、実際に出現する景色ですよね。世の中にはそういった景色であふれているけど、それを見られないことのほうが断然多い。でも、無理してやっと見られるようになったものもすごく多い。それを探す作業がすごく楽しいです。

―それを見つけて、行って、作品にして、見られない人に伝える、ということですね。

KAGAYA:そうですね。年に1、2回しかないものもあって、その日は晴れるのかなとか。だからこそ、それが目の前にやってきたときの感動はすごいですね。

自然を受け入れて楽しむ宙ツーリズム

KAGAYA:旅行って不思議なもので、現地に行くと「今度はこういうものを見てみたいな」とか現地の人の話から「他にもこういうところがあるぞ」とかがどんどん出てきて。話が膨らんで行きたい場所が増えていくことが旅行のおもしろいところですね。

―現地でどんどん生の情報を仕入れて「次はあそこ、その次はここ」って決めているのですね。

KAGAYA:現地で過ごすうちに調べても分らなかったものが分かるようになってきて「違う季節に来ればもっといいぞ」とか。

―そうやって旅先のことをよく分ったうえで生み出された作品だから、見る側は実体験に近い感覚になるのかもしれませんね。

KAGAYA:あとは、皆さんの興味があることを作品の中に入れていますね。この作品にでてくる南十字は「海外旅行のときに見たい」と言う人がすごく多いです。旅先で見てみたい日本と違う星があると、旅行に楽しみがプラスされますからね。旅をしていると地球の風景がどんどん変わっていくように、星空も変わっていく。特に南半球は日本では見えない星空が見えるので楽しいかなって思います。

―ぜひ、みなさんには変化していく星空を見る旅を楽しんでいただきたいですね。これから宙ツーリズムを楽しみたいと思っている人に「こう楽しんでください」などありますか?

KAGAYA:宙は人間の手の届かない力があって見えています。曇ることもあれば、見えないこともある。それは自然のことなので本当に受け入れるしかできないです。「見えなかったらしょうがないし、見えたらラッキー」という気持ちですね。自然の中で生かされているという気持ちで宙を見上げていると、もしかしたら何回も見上げているうちにすごい宙に出会えるかもしれない。宙を見上げていることが多ければ多いほど、その機会にも恵まれますからね。

KAGAYA(カガヤ)プロフィール

宇宙と神話の世界を描くアーティスト。プラネタリウム番組「銀河鉄道の夜」が全国で上映され観覧者数100万人を超える大ヒット。
一方で写真家としても人気を博し、写真集『星月夜への招待』『天空讃歌』『悠久の宙』『星と海の楽園』、フォトエッセイ集『一瞬の宇宙』を刊行。写真を投稿発表するTwitterのフォロワーは60万人を超える。
天文普及とアーティストとしての功績をたたえられ、小惑星11949番はkagayayutaka(カガヤユタカ)と命名されている。